とまべっちーの考え事

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文學界の東浩紀のインタビューを読んで  

「文學界」に乗った東浩紀のインタビューを読んだ。まずは中心となる主張を引用する。

「危機的な局面において人びとの頭を解きほぐす行為としてしか批評は存在しえない。」

「危機の言葉としての批評は、あくまでも健康を取り戻すためにあるわけですから、回復してしまえばもう批評は必要とされません。批評家は同じ顧客集団を相手にしつづけることはできないし、そもそもそうすべきではない。」

東は批評や哲学は病院のようなものだと言う。健康な人には批評も哲学も必要ない。世の中には常に健康な人のほうが多いのだから、批評や哲学がマジョリティを獲得することはありえない。しかし、どんな人も、人生のある局面において批評や哲学を必要とする時期はあるはずだと東は言う。そのときのために考え方や言葉を用意しておくのが批評家や哲学者の役割だという。まったくその通りだと思う。

批評や哲学が大衆に売れないからといって、大衆好みに合わせてカンタン化すると自己啓発になってしまう。自己啓発は東に言わせれば病院ではなく美容整形外科のようなもの。批評の言葉を無理やり健康な大衆向けにチューニングするとどうしてもそういう言葉に成り下がってしまう。そして、そういう言葉はその時は流通しやすいかもしれないが、実際のところまったく力のない言葉になってしまう。

ところで私にはひとつ疑問がある。東は自己啓発本の読者は健康だとしているが、本当にそうだろうか?私から見れば、自己啓発本の読者もそこそこ病んでいると思う。しかし、その悩みが批評や哲学には接続されない何らの理由がある。単純に知性が足りないのかもしれないし、実際のところさほど深い悩みではないのかもしれない。とにかく批評や哲学に行かずに自己啓発本でお手軽に済まそうとする人が多い。私から見れば彼らは病んでいるように見えるが、東から見ればそんなのは悩んでいるうちに入らないということなのだろうか。

また、東は批評には系統的な歴史や伝統があるわけではないと言っている。いろいろなところでいろいろな人が批評的なことをバラバラにやっている状態が正しい姿だと言う。党派性も要らないし、批評家集団のようなコミュニティも必要ない。私も一人でやっているので、批評とはそういうものだと言ってもらえるのは助かる。

東にはゲンロンの批評再生塾に対する不満があり、自らが主催する塾をやると言っている。批評再生塾は仲良しサークルになっている。小難しい言葉を用いて自分の好きなカルチャーを擁護する論文を書く人たちが集まっているが、東はそれを批評家とは認めていない。そういう人たちに批評など必要ないとさえ言っている。それは批評のような体裁をしただけのどうでもいい同人誌にすぎない。東は佐々木敦を直接批判はしていないが、まあお察しである。

そんな東が人文書に対する思いを語っている動画がこちら。内容は至極まっとうなものだが、かなりお怒りモードで喋っているので気を悪くする人もいるかもしれない。

カテゴリ: 東浩紀論

tb: --   コメント: 2

コメント

書き忘れたことを追記。東は哲学と人格は切り離せないと言っている。哲学者や批評家は書いたことだけで判断されるわけではない。その人の行動そのものも解釈の対象となる。
東にとってはゲンロンの活動も批評の実践の一部である。私も書いている内容とブログ運営の仕方が一貫していなければ評価されないだろう。安冨歩や苫米地英人が信用されていないのは、書いていることと彼ら自身の振る舞いの間に大きな乖離があるからだ。自分自身の人格から出てきた思想でなければ信用されないのである。

tomabetchy #WSsdzqd. | URL
2018/11/08 23:38 | edit

私も自己啓発書の読者は病んでいると思います。
東さんはよく「批評は健康な人間には必要がない。“だが”あるとき誰の人生にも“必要とされる”」というふうなロジックをよく使っていますが、本当に必要とされているのか、証明したことがあったでしょうか?
そもそもそれは、ポストモダンという条件下では、証明も暴くこともできないものだったのでは?
東さんは本質的に欲望にしか興味ありませんね。仮にそれが病んでいるとしてもですよ。
結局、自己啓発書が批評、哲学に接続されない理由は「病みかたが足りない」からではないかと思いますね。
東さんがいうふうに批評、哲学が病院のようなものであるとすれば、そもそも病気を作ってるのは病院=批評、哲学では?
そうであれば、批評、哲学の言葉は確かに強いものではうるだろうけれど、もうなにがウイルスであるかはハッキリしていますね。

もう全然関係ない話ですけど、東さんは人生から批評とか哲学をスパッと切ってしまえば、けっこうスッキリすると思うけど!

ice #- | URL
2018/11/13 04:04 | edit

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