とまべっちーの考え事

ホラクラシー組織の学習塾を作ってみたい。

日本人の匿名志向  

東が非常に興味深いことを話していた。ロシアでは詳細な公文書が残っている。日本には公文書を残すという文化がない。そこには実は日本人の根深い精神性があるのではないかという話だった。「さすが思想家!」と思わせる考察だ。



日本人は死ぬと名前を失くす。集合的な「御霊」のようなものになる。そういう感覚がある。ロシアは死んでもあくまで個人のままだ。死者の個人名がキッチリ記録されている。日本人は名前を伏せたがる。ジャーナリズムでも人物はすぐ仮名になってしまう。だから後世に残す記録としては弱い。ふわっとした記録しか残らない。そこには日本人独特の名前に対する感覚があるような気がすると東は言う。

固有名を出さないジャーナリズムがすぐに風化してしまうという問題はその通りだと思う。なんとなく「こんなことがあったよね」というくらいのぼんやりした記憶しか残らない。また、ジャーナリストが取材先を仮名にばかりしてしまうと、他の記者や研究者が追跡取材をできないという問題もある。「関係筋によると」とかいうのもそうだ。結局記者やメディアを信用できるかどうかという問題になってしまう。一次情報にアクセスできない人にとっては「どうやらそうらしい」という程度の蓋然性で判断するしかなくなってしまう。そういうジャーナリズムは弱い。

日本人はなるべく匿名でいたがる傾向がある。ネット空間だけの話ではない。リーダーになりたがらないし、自分の名前で仕事に責任を持つことも回避したがる。集団の一員として溶け込んでいることに安心感を覚える。そういうメンタリティの人が多いので尚更リーダーの負担は大きくなる。

ところで話は変わるが、東はゲンロンのスタッフに相当不満があるようだ。遊び感覚で来ているスタッフがいるという。理想を共有できていないという。事業を広げるとどうしても人数合わせのためにそういうスタッフを雇わなければならないが、そのために自分の時間が消費させられている。本来やりたかったことから離れている。だからゲンロンの事業を縮小してでも自分のモチベーションを保つことを優先しなければならないと言っている。

中小の出版社でワンマンカリスマ経営者の下で働くのはそれなりに敷居は高い。スタッフに和を乱されているようだが、イエスマンしかいなくなってしまったらそれこそカルトなので、変わったことを言う人も社内にいたほうが健全だとは思う。ただ、東の口調をみるとそのスタッフは単純に能力や性格に問題があるようだ。

東のツイッターのフォロワーには既存のスタッフよりも優秀な人たちがいくらでもいるだろうが、ゲンロンのために「じゃあ私が手を貸しましょう」と言ってくれる人がひとりでもいるだろうか?私自身も東の仕事には尊敬しているが、その下で働きたいとは今のところ思わない。よほど面の皮の厚い人でなければ耐えられないのではないかという気がする。

かつてネットでは匿名にするのがリテラシーだとされていたが、今は若い人を中心に実名アカウントを持つ人が増えている。匿名アカウントと器用に使い分けている人も多い。ビジネス目的なら実名がいいし、趣味を爆発させるつもりなら匿名のほうが無難だろう。私はリアルの人間関係に縛られずに自由にものを書きたいので匿名のほうがいい。しかしもしプロのライターになるとしたら、そうも言っていられなくなる。情報発信者が換金を考えるときに実名問題が出てくる。換金できるほどの内容もないのにとりあえず実名を名乗る人は、きっと何か勘違いをしているのだろう。


カテゴリ: 東浩紀論

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コメント

無題

公文書を残さないのは、政策に責任を取るつもりがない証拠。

これは天皇制と直結していることかもしれない。

公文書を残すことは、それで後世の人を補益ためもある。

責任を逃れ・後世の人を助けようとしない。

てのが、天皇制の裏の精神性・・・かもね・・・


三国志で、五丈原の戦いの後、諸葛亮急死後に、撤退した蜀漢軍の陣営を見た、魏の将軍の司馬仲達は
「公文書や物資は、軍隊の神経や内臓。それを放置して撤退したのだ。確実に諸葛亮は死んでいる」
と断言し、その通りだった。

ていうか「公文書」は、国家や社会の神経。
それを粗末にするのは、国家や社会を「ないがしろにしている」ってことの証拠であります。
自分の神経や内臓を大事しないと死んでしまいます・・
国家や社会も、その神経たる公文書を粗末にすると、確実に破滅します。


少なくとも、この150年の前半の戦争中毒状態・後半の指導者の無責任状態は、このような精神が大きな原因かもって思ってます。


公文書に関して、感想妄想でした。

遍照飛龍 #RFphBmaY | URL
2018/11/30 18:35 | edit

諸葛亮のエピソードは初めて知りました。たいへん興味深いです。公文書に対する意識の低さが無責任な国政につながっているというのは、本当にそのような気がします。

tomabetchy #WSsdzqd. | URL
2018/12/01 12:26 | edit

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